以下の解説文は日本OR学会のホームページを作成するときに私が書いた「扉の文」である。10数年も前に書いたものが現在もそのまま掲載されている。

当時、ホームページ作成の委員会設置を仰せつかり大役を任された。面倒なことを、面白いことが大好きな田口 東教授(中央大)が全面的にサポートをしてくれ、IT業者との折衝・指導を担当してくれた。

みなさん、そうやってOR学会のホームページが出来たのですよ。


田口 東教授

それより数年前の1994年、福岡でAOPRSの国際会議の時、高校生にORを宣伝して大学でORを勉強したいという優秀な高校生を生み出そうという提案が出てきた。

「OR学会の中に『高校生のためのOR」研究部会を作ろう」

田口教授が「主査は若山さんがやれ、わたしが幹事役で手伝います」と言う。

それなら「鬼に金棒だ」、引き受けてもよいとなって、結局、20名近い研究部会メンバーが「高校生向きのOR教材作成」という活動をした。高校での数学の副教材にしてもらおうと考えた。

和歌山県の日高高校・田辺高校では実際に高校生のための「出前講義」を何年にもわたって開催してくれた。熱心な先生、嶋田佳一先生がいてくれたお蔭である。そのきっかけは和歌山県教育研修センターの小山宣樹先生の要請で和歌山県田辺市で「高校生のためのORシンポジウム」を開催したことであった。和歌山県の高校の数学系の先生たちが30何名、それに部会メンバー15名が参加した。

私が懇親会のときに「いつでも来ますよ」と言ったのを嶋田先生が忘れずにいて「出前講義」のリクエストが来たのである。

私が第1回の「出前講義」をしたら、高校生が面白がって聞いてくれた。直接、高校生相手の講義は大変有意義だった。次の年も、その次の年もと続いたのである。そこで、研究部会の主メンバーが交代で「出前講義」をやったのだった。OR学会のスーパー強力メンバーの柳井先生(慶應大)、高橋先生(東工大)、田口先生(中央大)、逆瀬川先生(早稲田大)、伏見先生(東京大)は確か出前講義のメンバーだ。いい思い出だ。

(2016/1/8)


オペレーションズ・リサーチとは

オペレーションズ・リサーチという言葉をご存知ですか?

「オペレーションズ・リサーチ(OR)」という言葉さえ知らない人から言葉があることくらいは知っている人たち、これが日本人の99.99%ではないでしょうか。しかし、近年は「シミュレーション」というと誰もが日常的に使う言葉になりました。シミュレーションはORが意識的に取り上げた方法論のひとつなのです。

あなたはうまい手をつくり出せますか?

何か新しいことをしなければならない時、あるいは現在実行している事柄を改善しようとする時、よりうまい計画を立てたり、立てた計画が円滑に実施されるようなうまい管理を行うことが望まれます。

おそらくはいろいろな案を並べみて、それらの案を評価して一番よさそうな案を選択することが行われるでしょう。しかし、実際には「いろいろな案」といってもすべてを並べ立てることが難しく、どこかに落ちがあったり、「評価して」といっても、案を実施してみないことには結果の予測が立たないことも多いでしょう。

ORはこのような問題を科学的、つまり「筋のとおった方法」を用いて解決するための「問題解決学」であります。世の中にはありとあらゆる問題が次々と沸いてきます。問題とは「何か困っている」ことを指します。そのような新しい問題に挑戦するのがORです。

うまい手を考えるための定石をご存知ですか?

どんな問題でも解決できるというオールマイティな方法などあるわけがありません。しかし、ORには過去にたくさんの問題を解決してきた歴史があります。これらはORの財産です。さらに世界中のORの研究者や実務家は日々新しい問題を掘り出したり、その解決方法を研究したり発表したりしています。このように「やり方を考える」人たちの情報交換や発表の場が「OR学会」というソサイエティなのです。

ORの定石、これをOR手法といいますが、OR手法は「よりうまい手を考え出すための方法」を教えてくれます。

ORは応用分野がきわめて広い横糸的な性格をもっています。

テレビといえば電気工学、自動車といえば機械工学というように伝統的な工学は縦糸的な性格を持った学問分野といえます。

ORは問題の分野を選ばないという横糸的性格を持っています。問題に取り組む場合、どのような分野でも、どのようにしてやるかを決めるための分析と意思決定をしなければならないからです。大企業でも中小企業でも、商店でも農家でも、金融でも行政でも、生産工場でもサービス業でも、何をやるにしても「分析と意思決定」を行っているわけです。

OR学会の会員には大学の学部でいえば、経済学・経営学・理学・工学・農学・医学・芸術などありとあらゆる分野にたずさわっている会員から構成されています。このようなことは他学会にはなかなかありません。理系、文系も問わないのです。

誰もがPCを使う世の中になりました。コンピュータが自由に応用できるようになることは横糸を張ることにつながります。さらにOR的な発想が出来るようになると、賢くて頑健な横糸となることでしょう。これを”OR inside”と申します。

興味を持ったら

OR学会はORを自分の専門にしている人たちはもちろんですが、広くORを使ってみようという人たちに会員となっていただき、相互に情報交換をし、刺激をし合ってより豊かな社会を築くための場としてゆくための活動を盛んにしてゆきたいと考えています。それで「ORが地に足がついた状態」といえるようになります。いまや日本はアメリカに次いで世界で2番目の会員数を有するOR大国ですが、社会の目に見えるような成果をあげるには会員の裾野を広げる必要があります。

将来の日本を背負う若者にも声を大にして言いたいです。「面白くて役に立つOR」を勉強してみないかと。横糸人間と縦糸人間がバランスよく存在する社会にしたいと思いませんか。

人間社会で使われることのないORは意味がありません。みなさん、ORは実学です。

注) ”OR inside”という語は”Intel inside”をもじった言葉です。PCの中にはIntel社のCPU(Central Processer Unit)という頭脳が入っているからいい働きをすると言いたいのですが、われわれはPCの中に”OR”という頭脳を持てば、更にさらに人間社会の役に立つPCになると言いたいのです。


⇒ 日本OR学会サイト