よけいなお話5−2

郊外にドライブに出掛けました。そろそろ昼時なのでどこかのレストランに入ろうとしています。「おっ、ちょっと美味しそうだけどもうちょっと先で探そう」なんていっているうちに寂しくなって来て期待外れのレストランに入ってしまったなんて経験はありませんか。

同じような状況はビジネスでも起ります。いろいろな仕事の引き合いがポツポツとやてきます。儲かる仕事もあるし、儲からない仕事もあるはずです。一旦引き受けてしまうと、手が一杯になってしまって次に来る儲かる仕事を逃してしまうこともあるわけです。

どこで決断するか、手を打つかを決定する問題の類です。別の言い方をすると「どこでストップをかけるか」とうことにもなります。そこで、この種の問題を「最適停止規則問題(Optimal Stopping Rule Problem)」とよんでいます。

最適停止規則問題にもいろいろなタイプがありますが、4、50年頃前から研究されています。当時「浜辺の美女問題」あるいは「美人秘書採用問題」とよばれる楽しい問題に関する論文が書かれたのです。つぎつぎやってくる候補を選択する問題です。ただし、全部並べておいて選ぶわけにはいかないという条件がついているので難しくなるのです。お嫁さんを決めるのもまったく同じような状況ですよね。

さて、過去の経験からこれから現れる対象の得点が大体は見当がつく場合と、見当がつかない場合とで問題の難易度が違います。小遣いの問題はどちらでしょうか。今回のケースでは暗黙のうちに「見当がつかない」ものとして問題を考えています。親が考えている小遣いの下限と上限とがわかっている場合には、別の戦略が立てられます。

これから候補対象が一定の数だけ現れるものと仮定します。見当がつかないというのはデータが無いので、対象の点数の分布がわからないということになるのですが、この場合は、最初のいくつかは無条件で見送り、この間に得られた点数の情報から、平均点や分散を推定し、残りの候補対象から最適に選んで決定するという戦略をとることになります。少々荒っぽくいいますと、候補対象の点数分布の形に関わらず、およそ20%までは見送るのがよいことがわかっています。

小遣いの問題では出てくる対象がたった3個しかありませんから、この数には合いませんが、3の20%は0.6ですから、1個は見送りということになるのです。封筒が10枚もあると、まず3枚は見送ることになりますが、デシジョン・トリーが大きすぎて描くことがままならなくなります。こういうときに数学とコンピュータの力が発揮させるのです。